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vol.91

お酒は飲まない、太っていない…
“人間フォアグラ”に要注意

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フランス語で「フォア(foie)」は肝臓、「グラ(gras)」は脂肪を意味し、「フォアグラ」を直訳すると“脂肪肝”という意味になります。
つまり、肝臓に脂肪が過剰に蓄積された状態を指しますが、もしかしたら、あなたもそうなっていませんか?

脂肪肝とは?

肝細胞に30%以上脂肪が蓄積している場合や、肝臓の重量の5%以上を脂肪が占める場合に「脂肪肝」と診断されます。
「肝心要」という言葉があるように、肝臓は人間の体にとって重要な働きをする臓器で、「代謝」「解毒」「胆汁の合成・分泌」など、生命維持に欠かせない役割を担っています。この重要な臓器が脂肪によって本来70%の力しか発揮できないとなれば、体へのダメージは計り知れません。放置すれば、肝硬変や肝がんへと進行するリスクもあります。

脂肪肝の種類

脂肪肝は以下のように分類されます。

ALD(エーエルディー)
アルコール関連肝疾患
アルコールの過剰摂取が原因で起こる肝疾患。
1日の飲酒量はエタノール換算で男性60g以上、女性50g以上
飲酒によって肝臓に脂肪がたまり、中性脂肪が合成・蓄積されることで起こる脂肪肝。進行すると、ASH(アルコール性肝炎)、さらには肝硬変・肝がんに至るケースもあります。アルコールが原因ではない脂肪肝に比べて、そのリスクが高いと言われています。

MetALD(メットエーエルディー)
代謝機能障害アルコール関連肝疾患
2023年以降に国際基準として採用された新しい分類
アルコール摂取に加えて、メタボでもある人の脂肪肝
1日の飲酒量はエタノール換算で男性30~60g、女性20~50g

MASLD(マッスルディー)
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
非アルコール性肝疾患(NAFLD)と知られていた病気の新しい名称
お酒はほとんど飲まないのに、メタボリック症候群が原因の脂肪肝
1日の飲酒量はエタノール換算で男性30g以下、女性20g以下

その他、割合は少ないですが、薬や病などの特別な原因によって起こる脂肪肝、原因がわからない脂肪肝もあります。

MASLDの患者数は男性の中年層、女性の高齢者を中心に少なくとも1,000万人以上と推計され、現代人の2人に1人が予備軍となるほど増加しています。そのおもな原因は、糖質や脂質の多い食事、運動不足、ストレス、無理なダイエットなどによるものです。
また、MASLDの患者のうちの1~2割がMASH(マッシュ:代謝機能障害関連脂肪肝炎)だと言われています。
MASHも進行すると肝硬変や肝がんのリスクがあり、死亡に至るケースもあるため注意が必要です。
「お酒は飲まない・太っていない」からといって油断はできません。
若い女性でも「ダイエット脂肪肝」になるケースが増加。
極端な食事制限などで無理なダイエットをすると低栄養性脂肪肝と呼ばれる脂肪肝になることがあります。

肝硬変の恐ろしさ

肝障害が進行し、肝臓が線維化したものが肝硬変です。
第59回日本肝臓学会総会(2024年6月)では、肝硬変の成因を、「2014年〜2017年」と「2018年〜2021年」を比較すると、ウイルス性によるものが大きく減少し、代わりにアルコール(35.4%)やメタボ(14.6%)が原因の脂肪肝の割合が大きく増加していました。肝硬変が進行すると、肝臓の機能が著しく低下し、さまざまな合併症を引き起こす可能性があり、最終的には、肝不全から、死に至ることもあります。
もちろん肝がんの発生母地にもなるため、肝疾患の早期発見と適切な治療が求められます。

自覚症状はほとんどなし!

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、症状が出にくいのが特徴です。
だからこそ、健康診断の結果に注目することが重要です。
特に指標として注目したいのが「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」の値です。
日本肝臓学会は2023年、「ALTが30U/Lを超えたら医師に相談を」と警鐘を鳴らす「奈良宣言」を発表しました。

奈良宣言特設サイト
https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/index.html

脂肪肝は改善できる!

残念ながら、脂肪肝を劇的に改善させる特効薬はありません。
基本的には生活習慣が影響して起きるため、治療は食事療法と運動療法が主体になります。
続けることができれば、肝臓は再生能力の高い臓器なので改善の可能性は十分にあります。

食事のポイント

毎日の食事では、糖質の摂取量を緩やかに減らすことが必要です。
主食のご飯やパンの量を半分に減らしたり、玄米・雑穀米・全粒粉パンに置き換えたりしましょう。
また、糖質の中でも「果糖」は体への吸収が早いため、果糖が含まれたジュース、スポーツドリンクなどの甘い飲み物を摂らないことも意識しましょう。

脂肪肝の予防にも改善にも、「オサカナスキヤネ」

8つの食品を毎日、積極的に摂るようにしましょう。

 お茶
  オリーブオイル
 魚(主に青魚)
 海藻
 納豆
 酢
 きのこ類
 野菜
 ねぎ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにく)

例えば、お茶(緑茶)に含まれるカテキンには、肝臓で発生する活性酸素を消去する抗酸化作用があり、さらに脂肪肝の原因となる酸化ストレスを軽減する効果も期待できます。
手軽に始められる習慣なので、取り入れるのもよいでしょう。

運動と体重管理

脂肪は減量時に
1肝臓脂肪 → 2内臓脂肪 → 3皮下脂肪の順で落ちていきます。
つまり、肝臓脂肪は最も先に落ちやすい脂肪。
これはモチベーション維持にもつながります。

体重を7%以上減らせれば肝臓の脂肪沈着が改善し、10%以上になると肝臓の線維化も改善すると言われています。

サプリメントやプロテインにも注意

健康意識の高まりとともに、サプリメントやプロテインを取り入れている人も増えていますが、特定の栄養素の過剰摂取につながるおそれがあり、肝臓への負担も招き得ることから注意が必要です。

まとめ

脂肪肝は「症状がないから」と放置すると、将来的に命に関わる病気に進行する恐れがあります。
健康診断の結果で、あなたのALT値をチェックしてみてください。


•お酒は飲まなくても、太っていなくても油断しない
•ALTが30U/Lを超えたら医師に相談
•食事と運動で、肝臓は回復可能!

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“一流飲食店のすごい戦略”

見冨右衛門 著

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画像:マスクをしている熊の人形

肝臓は一般的に何の臓器と呼ばれている?
  • ① 沈黙の臓器
  • ② おしゃべりな臓器
  • ③ 悲しみの臓器
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