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名医が答える健診のギモン
vol.77

がん研有明病院
名誉院長に聞くシリーズ
第3回「健康診断と人間ドック」

画像:麻雀

健康診断を受けると、自分の身体に関するたくさんのデータ、
数値を確認することができます。自身の健康状態を知ることが できる大切な機会です。
第3回は健康診断と人間ドックがテーマです。データをどのような観点から 注目するか、内科医とのコミュニケーション方法について、がん治療の名医で、医療現場の 最前線を走ってきた、がん研有明病院の山口俊晴名誉院長に話を伺いました。

画像:指ヨガ

身体の変化を見逃さない

健康診断で診る項目はさまざまありますが、中でも重要なのは体重、身長など誰でも簡単に 計測可能な身体のデータです。自宅に体重計がない方は、ぜひ用意することをオススメします。 体重測定は健康状態を把握する上で、最も手軽な方法です。

体重の内訳を見ると、骨が約20%、筋肉が40~50%と、骨と筋肉がかなりの割合を占めています。
その他、皮膚が8%、血管が3%、血液が8%などです。これらの要素は、水分、ミネラル、脂肪、 タンパク質、糖質などで構成されているので、体重の変化からはさまざまなことが分かります。

たとえば食べ過ぎで体重が増加した場合は、生活習慣を見直す必要があります。ゆっくり食事を したり、夕食を軽めにして昼食をしっかり摂ったりといった工夫を取り入れてみましょう。

肥満対策として摂取カロリーのコントロールも重要ですが、消費することも大切です。
男性は1日9,200歩、女性は8,000歩を目標に、週2回以上、1回30分以上の運動を 1年以上継続することが推奨されています。

BMIの計算式

体重(kg)÷{身長(m)の2乗}

体重が80kg 身長1.7mの場合 80/(1.7×1.7)でBMIは約27.68と計算できます。

画像:ボードゲーム

BMIが25以上であれば肥満と判断されますが、食べ過ぎや運動不足だけを意識すれば よいわけではありません。例えば心不全により水分の貯まってしまっていることも考えられます。
心不全になると心臓のポンプ機能が低下し、腎臓への血流が減って尿が作れなくなり、 体内に水が溜まって足などがむくんでしまいます。気をつけたい病気です。

一方、体重減少の場合は、栄養不足や脱水、あるいはがんが原因である可能性があります。 体調不良で体重が減り、「いいダイエットになった」と喜んでいたら、実はがんだったという ケースも少なくありません。何となく体調が優れないまま、理由もなく体重が減っていく 場合には注意が必要です。

冬は汗をかかないから大丈夫と思われがちですが、汗をかかなくても常に水分が皮膚から 失われており、乾燥した冬場でも脱水は起こりえます。

その他脱水の主な原因は下痢ですが、そこで最も問題なるのは、塩分不足です。大腸は水分と 塩分を回収する器官であり、下痢になると水分が排出され、体重が減ってしまうのです。
下痢をした時は、尿量が十分になるまでスポーツドリンクなどで水分、そして塩分を補給しましょう。

画像:ボードゲーム

検診結果を見て体重を落としたい、と思っている方も多いかも知れませんが、脂肪はそう 簡単に減りません。体重の増減で一番早いのは水分、次に筋肉、そして最後に脂肪です。 脂肪から減ってくれれば嬉しいのですが、残念ながらそうはいきません。

動かずにじっとしていると減るのは、筋肉です。例えば入院すると、必ず体重が減ります。 喜ぶ人もいますが、実は喜んではいけません。高齢の場合、筋肉が落ちてしまい歩行が困難に なってしまう可能性もあります。

体重は、臓器、脂肪、筋肉、骨、水分、食事など、さまざまな要素の総和です。スタイルの 良し悪しといった観点ではなく、体内で起こっている何らかの変化を知らせる有効な指標です。 定期的に測定しましょう。

画像:ボードゲーム

血管を健康に保つと長生きできる

血圧を気にされるは方も多いと思います。血圧は刻一刻と変化し、車のハンドルを握ったり、 階段を昇降したりするだけでも上昇するものです。常に低い状態を保つ必要はなく、 むしろ活動時には上昇することが自然な反応です。

しかし、安静時に血圧が上がり続けるのは異常です。夜間に高血圧が続くことは、心臓などに 大きな負担をかけるため、安静時の血圧を適切にコントロールすることが重要になります。

高血圧を抑制するには、塩分摂取量の制限が最も重要です。日本人の食生活においては、 塩分の過剰摂取が問題視されており、高血圧対策には減塩が不可欠と考えられます。

血圧が高い状態が続くと血管が損傷し、さまざまな病気を誘発します。
高脂血症などの要因も加わり、コレステロールが血管壁に蓄積することも考えられます。
血管を傷つけるような行為は避けるべきなのです。

日常生活で、血管への負担を増加させたり、有害物質を摂取したりしないように心がけましょう。
血管が健康な人は長生きする傾向にあります。タバコは血管にも悪影響を与えるため、 脳卒中や心筋梗塞などのリスクも高めます。血管が収縮することで血流が滞ってしまうのです。

「ひょっとして自分は高血圧かもしれない」と感じている人は、血圧計を購入し、自宅で定期的に 時間を決めて測定することをお勧めします。健康診断のデータだけに頼るのは危険です。 血圧は変動するものなので、日々の変化を把握することが重要となります。血圧計への投資は 決して無駄ではありません。会社に血圧計があれば、そこを活用するのも良いでしょう。

注意点としては、安静時の測定することです。精神的なストレスのある状態や運動の後では 血圧が上昇してしまうため、正確な値を測ることができません。自身の血圧をきちんと把握し、 必要であれば薬を服用するなど、適切な対応をすることが大切です。

画像:ボードゲーム

医師の診察を受けるときには準備が大事

検診の最後に、内科医の診察の時間があります。自身の身体で気になるところがあれば予め 質問などを準備しておくと良いでしょう。

診察の時間は限られているため、どうしても形式的なやり取りになりがちです。
例えば、心臓病の既往歴があるなら、それを伝えつつ現在の状態を尋ねるなど、質問を準備して おくのが賢明でしょう。数分間で全てを解決しようとするのは難しいと言わざるを得ません。

担当するのは専門医ではなく、一般の内科医であることも認識しておく必要があります。 過度な期待は禁物です。きちんと整理して書き留めてから診察を始め、特に気になる点は 絞り込んで質問するのが良いでしょう。

最後にアドバイスをひとつ。 もし検診の結果精査を勧められ、精査を受けた医師からの重要な話があるとなった場合、一人で 抱え込まず、二人で聞くことをオススメします。深刻な結果だと感じたら、家族や友人に同席して もらうのも良いでしょう。他者は冷静に話を聞けますが、当事者は「ガンかもしれない」と 告げられた途端、パニックになり、その後の説明が耳に入らなくなってしまうのです。

医師が「それほど心配ない」と説明しても、最初の言葉で頭が真っ白になり、冷静さを失って しまうこともあります。そんな時、同伴者がいれば客観的に話を聞くことができます。
例えばパートナーが同席すれば「もし夫が死んだらどうしよう」と不安を抱えながらも、 「ここはしっかり聞いておかなければ」と冷静に医師の説明を聞くことができます。
軽い病気なら一人でも構いませんが、深刻な病気の時は、必ず二人で聞きに行ってください。

まとめ

・誰でも計測できる身体データは、健康診断以外の時にもチェックする
・体重の増減には、病気の可能性もあるので注意
・医師の診察を受ける際には、予め質問などを準備しておく

画像:ボードゲーム

山口俊晴
(やまぐち・としはる)

がん研究会有明病院名誉院長
バリューHRビルクリニック院長

消化器外科医。1973年京都府立医科大学卒業。 2015年に公益財団法人がん研究会有明病院病院長、2018 年より名誉院長。 2020年には、「人にやさしい検診」をコンセプトに検診サービスを提供する 医療法人社団バリューメディカルバリューHRビルクリニックの院長に就任。 胃がんの「治療ガイドライン」の作成委員(初版から3版)を務め、NHK「今日の健康」 「名医にQ」「チョイス@病気になったとき」などに胃がんの専門家として出演。 著書に『がん患者・家族からの質問―担当医としてこのように答えたい』(へるす出版) などがある。

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