皆さんは、1日にどれくらいの唾液が分泌されているかご存じですか?
実は、私たちの口の中では1日に約1~1.5リットルもの唾液がつくられています。唾液は単なる「口の中の水分」ではなく、健康を支えるさまざまな働きを持つ、まさに「天然の健康液」です。
唾液には、食べ物の消化を助ける、細菌の増殖を抑える、
歯を守るなどの働きがあります。安静時に分泌される「安静時唾液」と、
食事や咀嚼によって分泌される「刺激唾液」の2種類があり、
なかでも「刺激唾液」は、食事と健康を支える重要な役割を担っています。
刺激唾液は食事の際、一気に大量分泌され、1日の唾液量の6~8割を 占めています。特に食後は、口の中が虫歯になりやすい酸性の状態に 傾きますが、刺激唾液には、それを中和する「緩衝(かんしょう)作用」が あり、その働きは安静時唾液の20~30倍ともいわれています。
刺激唾液の分泌量は、加齢や生活習慣の影響を大きく受けます。
柔らかい食品の増加や早食いの習慣、噛む回数の減少などの食生活の 変化により、昔の食事に比べると、現代人は噛む回数が大幅に減って いるといわれています。そのため、噛むことで分泌される刺激唾液も、 十分に出にくくなったと考えられているのです。
噛む回数が減ると、あごや口まわりの筋肉を使うことが減少する だけでなく、十分な満腹感を得にくくなり、早食いや食べ過ぎを 招くことも。こうした状態が続くと、噛む力の低下にもつながります。
さらに、パソコンやスマートフォンに集中する際の無意識の緊張や 口呼吸も、刺激唾液が出にくくなる(ドライマウス)大きな要因に なっています。
では、刺激唾液が不足すると、私たちの体にはどんな影響が あるのでしょうか。ます。
食事中に分泌される刺激唾液には、食べ物をまとめて飲み込みやすく する働きがあります。そのため、刺激唾液が減ると特に高齢者では、 むせやすい、飲み込みづらい、のどに残る感じがするといった症状に つながることがあります。
食べたものを消化する作業は、唾液中のアミラーゼによるデンプン 分解からスタートします。最終的には胃や腸で消化されるので大きな 問題にはなりませんが、「消化のスタート」が滞りやすくなります。
刺激唾液には、食べかすを洗い流す、酸を中和する(緩衝作用)、 歯の再石灰化を助けるなどの働きもあります。そのため刺激唾液が 少ないと、食後に口の中を健康な状態へ戻す力が弱くなります。
実は味の成分は「唾液に溶けること」で初めて舌の味覚受容体に 届きます。刺激唾液が不足すると、味を感じにくくなり、 食事のおいしさが損なわれます。
刺激唾液を増やすためには、食事の際に「しっかり噛むこと」が 何より大切です。今日からできる「食事」と「ケア」の習慣を紹介します。
<食事編>
毎日の食事で「噛む回数」を意識することが、唾液分泌を促す第一歩。
例えば、ごぼう、れんこん、切り干し大根、きのこ類、海藻類など、
自然と噛む回数が増える食材を普段のメニューに取り入れてみましょう。
また、キシリトールガムを噛む習慣をつけることもおすすめです。
<ケア編>
●唾液腺マッサージ
噛むことに加えて、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)を刺激する
マッサージも唾液分泌を促す効果的な方法です。
ポイント 力を入れすぎず、やさしくリズミカルに動かしましょう。
ポイント 親指の腹で、ゆっくり、心地よい程度の圧で行います。
ポイント 痛みがない程度の強さで、やさしく刺激しましょう。
口の周りや舌の筋肉を鍛える「あいうべ体操」もおすすめです。
※多くの歯科医院でも口腔機能向上の一環として推奨
刺激唾液は、私たちの健康を支えている大切な存在です。 その刺激唾液をしっかり分泌するためにも、 食事は「しっかり噛む」ことを習慣にしましょう。
しっかり噛むことは、口腔環境を整えるだけでなく、 体全体の健康にもつながります。まずは今日の食事から、 「あと5回多く噛む」ことを意識してみましょう。 口と体の健康を守る習慣づくりの第一歩になるかもしれません。
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