100秒でよめる・できるマガジン

vol.44

   「更年期の対処法」
産婦人科医に聞くシリーズ第3回



「娘さんから『最近怒りっぽいけど更年期じゃないの?』
と言われて気がつく方がいます」
産婦人科専門医・予防医療普及協会理事 三輪綾子医師

100秒メルマガでは、女性特有の健康問題や疾患について情報発信をしている
三輪綾子医師に、あらゆる世代の女性、そして男性も知っておきたい「女性の健康」への
向き合い方についてお聞きしました。
全3回シリーズの最終回は、「更年期の対処法」をテーマにお届けします。

不調の原因はもしかしたら?
男女ともに訪れる「更年期」

―年齢を重ねるにつれ、耳にするようになる「更年期」という言葉。
 一体どのようなものなのでしょうか?


更年期とは、女性が閉経する前後5年の、合わせて10年間を指すものです。
閉経の時期は個人差がありますが、日本人女性の場合は平均50歳。
この期間、女性の体は性ホルモンの分泌量が変わりやすく、乱気流のように
アップダウンを繰り返します。
その変化が自律神経に影響を及ぼすことで、のぼせやほてり、発汗などが
自分のコントロールきかない形で起こるホットフラッシュや、疲れやすさ、肩こり、頭痛、
関節痛、動悸、めまい、鬱やイライラ、不眠などの精神神経症状など、
さまざまな症状が現れるのです。人によって症状の出方や重さは変わりますが、
だいたい45歳ぐらいから55歳ぐらいまでの間に、これらの症状が出てきたら、
「もしかしたら?」と思っていただくといいでしょう。
さらに、この症状が日常生活に支障をきたすほど出るようになると、
更年期障害という病気に変わっていきます。

―ちなみに、男性にも更年期があると聞いたのですが、本当ですか?

はい、男性にも更年期はあります。男性も女性と同様に、年齢を重ねると生殖機能が
終わりに向かい、性ホルモンの分泌量も変わっていくなかで、
全身の疲労感やイライラなどの更年期症状が現れる場合があります。
しかし男性の場合は、女性と違って閉経がなく、ホットフラッシュなどのわかりやすい
症状も起こらないため、更年期症状が出る時期は定かではありません。
40代ぐらいから少しずつ更年期症状が出はじめる方もいれば、70歳ぐらいまで
感じない方もいて、年齢幅もかなりあるので診断がつきにくく、
不調の原因が更年期だと気づかないまま終わる方も多いのです。

真面目、頑張り屋さん、
ストレスを抱えている人は注意を

―更年期には、どのように向き合っていけばいいのでしょうか?

更年期症状は、性ホルモンのバランスも大きく影響しますが、
実は元々の性格や社会的なプレッシャーなども症状に大きく影響していると言われています。
例えばすごく真面目で頑張り屋な人、家庭環境でパートナーとうまくいかないとか、
子供が受験だとか、親の介護をしなければいけないといったストレスを抱えている人などは、
そこにホルモンの変化が加わることで症状が重く出てしまいます。

本人ができることとしては、症状が気になり始めたら早めに自分の状態を
簡略更年期指数(SIM)でチェック※してかかりつけの産婦人科医に伝えてほしいなと思います。
また、かかりつけがいない、誰に相談していいかわからないという場合は、
専門医に相談しても良いでしょう。ヘルスケアにおいて、産婦人科はハブのような
存在ですから、困りごとがあったら自分が楽になるように、
まずはご相談に来ていただきたいですね。そして更年期障害と診断された場合、
ホルモンバランスの乱気流をどう乗り越え、閉経後の生活にいかにスムーズに
移行できるかに焦点を当てて治療を行います。

―実際に、どのような診察や治療が行われるのでしょうか?

更年期障害は、産婦人科(男性の場合はメンズヘルス外来など)でカウンセリングや
採血などの検査を行い、ほかの病気の可能性がないかチェックしたうえで診断が下されます。
そして、不眠の症状が出る方は入眠剤、イライラの症状が出る方は抗不安薬など、
現れている症状に合わせて医師からお薬が処方されます。

主な更年期症状であるホットフラッシュに対しては、外部からホルモンを補充し、
変動する性ホルモンを一定にする「ホルモン補充療法(HRT)」をお勧めします。
HRTは、貼るタイプ、肌に塗るジェルタイプ、飲むタイプがあり、
ご本人の体質やライフスタイルに合わせて選ぶことができます。
そのほか、コレステロールが高いとか、中性脂肪が高い方の場合は、飲み薬をお勧めします。
ちなみに男性の場合は、基本的にはテストステロンが入っているジェルタイプの
薬を塗る人が多いですね。

更年期の乱気流を乗り越え、スムーズに閉経後の生活に移行する上で、
薬を長期間使い続ける必要はありません。その時出ている症状が楽になるよう、
医師の指示に従って上手に薬を使っていただくことで、閉経後へと無事に着地できるはずです。

「お母さん、最近怒りっぽいよ」
周囲の声に一度耳を傾けてみて

―最後に、これから更年期を迎える方にアドバイスをお願いします。

更年期を上手に乗り越えるためには、現れている更年期症状に自分で気づくことが大切です。
40歳を過ぎた頃から55歳ぐらいまでの間に体調の変化が出てきている方で、
辛さを感じるようでしたら、早めに産婦人科の受診をお勧めします。
また私のクリニックには、娘さんから「最近怒りっぽいけど、更年期なんじゃないの?」
と言われて、更年期だと気づき、受診を決めたという患者さんもいます。
このように、自分の精神状態の変化は自分ではわかりづらいことがあるので、
家族や友人など、周囲の声に耳を傾けて自覚していくことが大切です。
本人が頑張りすぎなくてもいいように、家事を分担するなどして、
ご家族も日頃のストレスを軽減してあげられるよう協力しましょう。

そして受診をしたらぜひ、「こういうカウンセリングをしてもらったよ」
「検査はこんな感じだったよ」「ここの病院がよかった」と、職場の同僚や友人など、
周囲の方々にエピソードを共有してみてください。そうすることで、
他の女性も更年期に自覚的になれますし、受診をためらっている人の後押しにもなり、
いい循環が生まれるのではないでしょうか。


まとめ
・更年期とは閉経を挟んだ10年のことで、症状の出方はさまざま。個人差も大きい。
・薬だけでなく日常のストレスポイントを減らしていくことが、
 更年期症状改善のポイント。
・更年期症状を自覚し、受診したら、その体験談を共有しよう。

三輪綾子
(みわ・あやこ)

産婦人科医(THIRD CLINIC GINZA院長)
予防医療普及協会理事


2010年、札幌医科大学卒業。順天堂大学産婦人科学講座に入局。
産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医、産業医。「予防医療普及協会」の理事として、女性特有の健康問題や疾患について情報発信していくためメディアに多数出演。
2022年、THIRD CLINIC GINZA(サードクリニック)を開院し院長に就任。著書に『女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる』(青志社)がある。

VOL.42~44のクイズ正解者から
抽選で合計30名様に当たる!

今回は
“女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる”
三輪綾子/堀江貴文 著

更年期だけでなく、50歳以上の女性が
気をつけたいのが、子宮体がん。
その特徴が違うものを選んでください。
  • ① 子宮の奥にできる
  • ② 不正出血がみられる
  • ③ 出産経験が多い人ほど注意が必要
注意事項

※クイズの解答の際に、メールアドレスのご入力が必要です。

※けんぽのメルマガの配信されているアドレスをご入力ください。

※メルマガ配信対象外のメールアドレスでの解答をされた場合は無効となります。

※クイズの解答はおひとり1回となります。複数行われた方は一番早い解答を対象といたします。

※博報堂健保加入者以外の方が応募された場合は無効となります。