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vol.43

「パートナーと取り組む妊活」
産婦人科医に聞くシリーズ第2回



「不妊の原因は、女性に原因がある場合が41%、
男性に原因がある場合が24%、男女ともに原因がある場合が24%。
約半数の割合で男性側にも原因があるのです」
産婦人科専門医・予防医療普及協会理事 三輪綾子医師

100秒メルマガでは、女性特有の健康問題や疾患について情報発信をしている三輪綾子医師に、
あらゆる世代の女性、そして男性も知っておきたい
「女性の健康」への向き合い方についてお聞きしました。
全3回シリーズの第2回は「パートナーと取り組む妊活」をテーマにお届けします。

妊活を始めるときは、
男女ともに検査を受けるとスムーズです

―子どもを望む男女が取り組む「妊活」。
 社会で活躍する女性が増えるに従い、妊活を始める年齢も高くなりつつあるそうですね。


はい。実際に2021年に妊娠・出産した女性のうち、
35歳以上がおよそ30%(※1)を占めています。
しかし35歳という年齢は、初産婦の場合「高齢出産」にあたると
日本産婦人科学会では定義されています。というのも、女性の卵子のクオリティは
年齢依存性で、35歳を過ぎると自然妊娠率が大幅にダウンし、流産率も増加、
卵子の質の低下から胎児の染色体にも異常が見られやすくなる傾向があるからです。

―妊娠のしやすさには、卵子の質が重要なのですね。卵子の量も関係するのでしょうか?

もちろんです。女性はお母さんのお腹にいるときが一番卵子の数が多く、
生まれて成長していくにつれて、どんどん卵子が減っていきます。
その減り方は人それぞれ異なり、長めに在庫を持っていられる人もいれば、
卵巣の手術などの影響で、20代であっても同年代の平均の半分ほどしか在庫がない人もいます。

―男性の精子も、量やクオリティは低下するものなのでしょうか?

男性の精子にも変化は起こりますが、精子の場合は個人差が大きく、
女性ほど顕著な変化が起こりづらいため、明確な指標があるとは言えません。
ですが、精子の場合は遺伝子異常が起きやすく、流産率も上昇することが
知られています。

―妊活はどのように始めるといいのでしょうか?

「なかなか妊娠しない」「タイミングの取り方がわからない」という方はもちろん、
「そろそろ子どもが欲しい」と考えている方は、なるべく早い段階で
産婦人科の受診をお勧めします。というのも、毎月生理が来ている方でも、
必ずしも排卵期に排卵しているわけではないからです。
さらに卵子の減少や質の低下をはじめ、卵管が通りにくい、着床しづらいなど、
不妊症の原因は、カウンセリングや検査をしないとわからないものなのです。
また、不妊の原因(※2)は、女性だけでなく、精子をつくる機能に問題がある
「造精機能障害」など、男性側にも多いのです。実際に男性が原因となる不妊は
トータルで48%となっており、パートナーの男性も産婦人科または泌尿器科で
必ず検査していただきたいですね。

―パートナーが妊活や不妊治療に積極的ではない場合、
  どのようにアプローチをすればいいのでしょうか?


日頃から性交渉や妊娠、出産のことについて話せていないカップルの場合、
相手に生殖機能があるか調べて欲しいと思っていても、
「話して嫌な顔をされたらどうしよう」という悩みを抱えやすいと思います。
その場合は、「『泌尿器科でいいから、パートナーの方にも一度受診してもらってください』って、
先生が言っていたよ」と伝えてみてください。
その方が女性側も言いやすいですし、効果的だと思いますよ。

産婦人科は、精子と卵子の
出会いをお手伝いする場です

―実際に不妊治療はどのように行われるものなのでしょうか?

検査をした結果、不妊の原因が見つかればその治療から始め、
見当たらなかった場合は、大きく分けて4つのステップ
(タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精)を踏んで治療を行なっていきます。
治療と言っても構える必要はなく、産婦人科は精子と卵子が出会いやすいように
お手伝いをする場だと考えていただけたらと思います。

不妊治療はこれまで保険適用外で、助成制度などは存在していたものの、
回数や所得の制限により十分に補助を受けられない方がいらっしゃいました。
また、これまでの医療は医療機関ごとに治療・費用が異なり高額な費用がかかっていました。
そこで、経済的な理由により治療を受けられない人をなくそうということで、
2022年4月から健康保険の適用が始まりました。
年齢、回数等の要件制限はありますが、体外受精等の基本治療はすべて保険診療となり、
医療機関の窓口で支払う医療費が原則3割負担となることで、
より不妊治療に取り組みやすくなりました。
治療方法による費用に関しては、医師にご相談ください。


タイミング法

産婦人科医が排卵のタイミングを見計らい、「今が妊娠しやすいです」と
性交渉のベストなタイミングを伝えていきます。
妊娠率は、不妊症ではないカップルの場合約20%、
不妊症のカップルの場合は5〜8%になります。

人工授精

タイミング方で妊娠が叶わなかった場合、排卵に合わせて精子を直接子宮内に注入する
「人工授精」を行います。こちらも体内で受精を行います。

体外受精

体外受精では、卵巣から卵子を取り出し、採取した精子を卵子にふりかけ、
体外で受精させ、受精卵を着床しやすいタイミングで戻す治療を行います。

顕微授精

通常の体外受精が成立しない場合は、排卵を誘発して取り出した卵子を顕微鏡で見ながら、
正常な精子を選んで細い針でひとつずつ注入し、
受精の手助けをしていく「顕微授精」を行います。
かなり高度な治療ですが、顕微授精による受精率は50〜70%
(日本生殖医学会調べ)と受精率が高くなります。

また、今すぐの妊娠は考えていないけれど、不妊症のリスクを減らしたいという方は、
卵子の質と量が低下する前に、なるべく早い段階で卵子凍結を検討するといいでしょう。


―凍結した卵子を不妊治療に使う場合は、どの治療が当てはまるのでしょうか?

体外受精になりますね。
凍結した卵子を解凍して、そのときのパートナーの精子をもらって受精させていきます。
もしすでにパートナーがいて、今は欲しくないけれど、
ゆくゆくは子どもが欲しいと考えている場合は、妊娠の確率を上げるために、
受精卵の状態で凍結するといいですね。

環境を整えながら、
不妊治療に取り組みましょう

―不妊治療をする上で、気をつけておくべきことはありますか?

妊活は男女で協力して行うものですが、
女性の方がよりストレスにさらされやすいと思っておいてほしいです。

特に不妊治療が始まると、採卵などの必要から女性の方が病院に通う頻度が高くなり、
排卵誘発剤や排卵促進剤の副作用が出る場合もあります。
生理が来た時に「今回も妊娠しなかった」という
ちょっとした絶望感を最初に味わい、更にストレスを感じやすくなってしまうのも、女性です。
このように、女性側の負担が大きいため、体外受精などの不妊治療を行う女性の3割から5割
が、治療開始の初期段階で抑うつ症状が現れるというデータもあるのです。
痛みを放置することは危険だということを、知っていただきたいですね。


パートナーからの些細なひと言に、傷ついてしまうこともあるでしょう。
そういった状況を加味した上で、男性側からも積極的に思いやりのある言葉を
かけていただきたいですね。


―不妊治療は2人で取り組むという意識が大切なのですね。

はい。そのためにも日頃からしっかりコミュニケーションをとり、
オープンに話し合える雰囲気をつくりましょう。
そうすることで男性からもパートナーの表情がちょっと曇ってきたなと気付き、
早めにケアしていけるはずです。


―最後に、仕事をしながら不妊治療に取り組もうとされている方へ、一言お願いします。

不妊治療と仕事の両立が難しい理由として「周りに迷惑をかけて心苦しい」
「上司・同僚の理解を得られない」「治療を職場でカミングアウトすることが難しい」といった
精神的な負担をあげている方が多くいらっしゃいます。
近年、不妊治療と仕事が両立できる体制作りの必要性が高まっています。
企業によって福利厚生として不妊治療のサポートがあったり、
リモートワークなど働き方の選択もできるようになったりしています。
また厚生労働省「不妊治療と仕事との両立について」のサイトでは、不妊治療の状況や
不妊治療そのものについての概要が記された
『不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック』や、不妊治療中であることを職場に伝える
『不妊治療連絡カード』などの資料も掲載されています。

このように、不妊治療を受ける方々への精神的負担軽減のため、
職場の受け入れ体制を整え、支えるための体制づくりも
社会全体で取り組んでいく必要があります。
産婦人科でも治療だけでなく、カウンセリングを受けられる場所も多くありますから、
まずは医師に相談してみてくださいね。

まとめ
・妊活を始める場合は、まずカップルで病院を受診しよう。
・不妊治療の種類はタイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精の4種類。
・妊活や不妊治療について、オープンに話せる環境をつくることで、支えあい、
 負担を減らすことができる。

三輪綾子
(みわ・あやこ)

産婦人科医(THIRD CLINIC GINZA院長)
予防医療普及協会理事


2010年、札幌医科大学卒業。順天堂大学産婦人科学講座に入局。
産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医、産業医。「予防医療普及協会」の理事として、女性特有の健康問題や疾患について情報発信していくためメディアに多数出演。
2022年、THIRD CLINIC GINZA(サードクリニック)を開院し院長に就任。著書に『女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる』(青志社)がある。

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今回は
“女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる”
三輪綾子/堀江貴文 著

不妊の検査や治療を受けたことが
あるカップルの割合は?
ヒント:「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」をみてね
  • ① 3組に1組
  • ② 4.4組に1組
  • ③ 11組に1組
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