妊娠すると、女性ホルモンの増加や免疫力の低下などで口腔環境が大きく変わり、虫歯や歯周病になりやすくなります。お腹の赤ちゃんに影響を及ぼす恐れもあるため、注意が必要です。
妊娠中は唾液の量が減り自浄作用も低下します。
そのため口腔ケアがとても重要になります。
空腹を感じるため、食事の回数や間食が増えると、食後の歯磨きが疎かになりがちです。
何か食べ物を口にしたあとは必ず歯を磨くように徹底しましょう。
妊娠初期のつわりがひどくて、歯ブラシを口の中に入れるのがつらいという妊婦さんもいます。
そうした場合は、できるだけ体調のいいときに歯を磨く、
歯磨き粉なしにする、ヘッドが小ぶりな歯ブラシを使うなど、工夫するとよいでしょう。
どうしても食後の歯磨きが難しい場合は、口をよくすすぎ、
食べかすを流すだけでも効果があります。
妊娠中は女性ホルモン「プロゲステロン」や「エストロゲン」が活発になり、これを栄養源にしている歯周病菌の増殖が促されるため歯周病が悪化します。
歯周病菌が体内に入ると、妊娠37週未満で出産してしまう「早産」や、赤ちゃんの体重が2500グラムに満たない「低体重児出産」のリスクが高まることが報告されています。
歯周病が進行して炎症が強くなると、「プロスタグランジン」という生理活性物質が増えます。
「プロスタグランジン」は、出産が近くなると子宮で分泌され、陣痛を促進する作用があります。
歯周病によって「プロスタグランジン」の濃度が上がると、「出産のゴーサインが出た」と判断し、子宮の収縮を起こして早産になってしまうのです。早産になると赤ちゃんの出生体重も小さくなります。
早産や低体重児出産の原因としては、一般的にタバコやアルコール、高齢出産などが知られていますが、歯周病に罹患している妊婦は、罹患していない妊婦よりも、
早産・低体重児出産になる確率が2.83倍、早産になる確率が2.27倍、低体重児出産になる確率が4.03倍も高くなります。生まれてくる赤ちゃんのためにも口腔環境に気をつけましょう。
そもそも歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。
ブラッシングが十分でなかったり、砂糖を過剰に摂取すると、細菌が歯垢(プラーク)をつくり出し、歯ぐき(歯肉)に炎症が起きます。やがて、歯を支える骨などが溶けていってしまうのです。
歯周病は他人からうつることがあります。主な感染路は、「親子」と「パートナー間」です。
歯周病菌は唾液にも含まれているので、箸や食器などの共有、キスなどにより唾液が移動すると感染します。
残念ながら、歯周病は基本的に治りません。ただ、進行を止めることは可能です。
歯科医院で治療を受け、歯周病の原因となる歯垢をためないことが大切です。
歯周病は軽度のうちは腫れや痛みなどの自覚症状がないため、知らないうちに進行してしまうことがあります。セルフチェックで思い当たる症状を確認してみましょう。
●セルフチェック
全体
□ 口臭を指摘された・自分で気になる
□ 朝起きたら口の中がネバネバする
□ 歯みがき後に、毛先に血がついたり、すすいだ水に血が混じることがある
歯肉の症状
□ 歯肉が赤く腫れてきた
□ 歯肉が下がり、歯が長くなった気がする
□ 歯肉を押すと血や膿が出る
歯の症状
□ 歯と歯の間に物が詰まりやすい
□ 歯が浮いたような気がする
□ 歯並びが変わった気がする
□ 歯が揺れている気がする
●判定
チェックが1~3個の場合
歯周病の可能性があるため、軽度のうちに治療を受けましょう。
チェックが4~5個以上の場合
中等度以上に歯周病が進行している可能性があります。 早期に歯周病の治療を受けましょう。
チェックがない場合
チェックがない場合でも無症状で歯周病が進行することがあるため、1年に1回は歯科健診を受けましょう。
出典:日本臨床歯周病学会ホームページをもとに一部改変
妊娠中は歯周病の疑いがなくても、歯科健診を受けたほうがよいでしょう。
赤ちゃんが生まれて育児が始まると、歯科医院に通うことが難しくなるからです。
歯科健診を受ける時期は、体調が安定してくる妊娠中期(16~27週)がおすすめです。
妊娠後期はお腹が大きくなり、治療用のいすに仰向けになるのがつらくなります。
妊娠中期であれば、虫歯や歯周病が見つかった場合でも、一般的な歯科治療のほとんどは問題なく行えますが、妊娠中に限らず定期的に歯科健診を受けるようにしましょう。
自治体によっては妊婦歯科健診が無料だったり、費用の一部を負担してもらえることがあります。
自治体のホームページなどで調べ、活用することをおすすめします。
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